今回は日本経済産業省が発表した中小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)導入ガイドブックから、成功した事例を紹介します。
3社の成功事例を解説し、DX導入の参考にしていただけるよう、わかりやすくお伝えします。中小企業の皆さんもぜひ参考にしてみてください!
取組例A:有限会社ゑびや・株式会社EBILAB(エビラボ)

三重県伊勢市にある飲食店「ゑびや」は、創業から100年以上を経た老舗店である。しかし、同店はカレーやうどんなど独自性に欠けるメニューを提供し、手書きの帳簿とそろばんを使った古風な経営手法で運営されており、顧客評価も低かった。2012年に新社長が就任し、データ活用によるDX(デジタルトランスフォーメーション)を進め、7年後には売上が5倍、利益が50倍に増加し、その手法が「世界一IT化された食堂」と称されるようになった。
社長は、飲食業の生産性向上に取り組むべき「当たり前」の課題として、付加価値向上、新規ビジネスモデル開発、従業員コスト削減に着目した。しかし、当時の同店では、会計や経理から受発注まで全てが紙や口頭で行われ、客観的なデータが不足していた。そこで、社長自らがエクセルを使って、天気、気温、各メニューの売上、グルメサイトのアクセス数、近隣の宿泊者予約数など、身近なデータを収集し始めた。
その過程で、社長は「伊勢神宮への参詣客は、午前中はおはぎ、午後はあんみつをよく食べる」という発見をした。これにより、同店はおはぎやあんみつを時間帯に合わせて提供するようになり、それが好評を博し、さらに店舗のレイアウトやメニューの改善、新規ビジネスモデルの開発なども進められ、結果的に売上と利益が増加した。今では、同店は株式会社EBILAB(エビラボ)として情報システム開発販売業も手がけており、データ活用によるDXの実例として注目されている。
取組例 B:マツモトプレシジョン株式会社

マツモトプレシジョン株式会社は、金属加工の専門メーカーであり、従来は電話やメールでのやりとりが主流でしたが、DXを進めることで、デジタルツールを活用した顧客とのコミュニケーションの改善や、業務の効率化を図りました。
具体的には、顧客とのコミュニケーションには、Web会議システムを活用し、顧客の要望やニーズをリアルタイムで確認することで、より的確な提案ができるようになりました。また、業務の効率化には、製品設計に3D-CADを導入し、製品のデータを蓄積することで、製品の設計変更や修正をスムーズに行うことができるようになりました。
これらの取り組みにより、マツモトプレシジョン株式会社は、顧客満足度の向上や業務の効率化、製品の品質向上などの効果を得ることができました。また、DXに取り組むことで、社員のモチベーション向上や、新しいビジネスチャンスの創出にもつながったとされています。
取組例 C:株式会社ヒサノ

株式会社ヒサノは、独自の加工技術を持つ金型メーカーであり、従来は製品の受注から出荷までのプロセスを紙やメールでやりとりしていました。しかし、DXを進めることで、受注から出荷までの一連のプロセスを一元管理することができるシステムの導入を行い、業務の効率化を図りました。
具体的には、製品の受注情報や生産スケジュールなどを管理する「ERPシステム」と、製品の生産過程や在庫管理を行う「MESシステム」を導入しました。これにより、受注情報や生産スケジュールの確認や、製品の在庫状況の把握がリアルタイムで行えるようになり、業務の効率化や生産管理の正確性が向上しました。
また、株式会社ヒサノは、製品の開発においてもDXを活用し、製品の設計や加工工程の見える化を図ることで、品質の向上やリードタイムの短縮につなげています。
これらの取り組みにより、株式会社ヒサノは、業務の効率化や品質の向上、顧客からの信頼度の向上などの効果を得ることができました。また、DXに取り組むことで、社員のモチベーション向上や、新しいビジネスチャンスの創出にもつながったとされています。
まとめ
中小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)について、成功した事例を紹介しました。取組例Aでは、業務の効率化に注力した取り組みが紹介され、取組例Bでは、顧客のニーズに合わせたサービス提供が詳しく解説されました。そして、取組例Cでは、データを活用して事業の拡大に成功したケースが紹介されました。DX導入に迷っている中小企業の方には、ぜひ参考にしていただきたい内容となっています。




